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ネットを下ろさないで — 最終公演、ネット、そして情事
最終公演が終わって十一分。
分かるのは、時間を計ったからだ。物を下ろすのを生業にしている男の癖。客席の照明がひとつずつ落ちていく——小さな降伏が並ぶように——最後にはリング中央のワークランプだけが残る。空中ブランコのロープは今も揺れている。誰も乗っていない。それでも揺れる。今夜について、こちらの知らない何かを知っているみたいに、ゆっくりと辛抱強く。
おがくずが靴に張りつく。テントの布は汗と松脂の匂いがして、二区画向こうの動物の匂いがかすかに混じる。乾いた干し草と獣の温度——トラックが積み込みを始め、道路がもう場内に入り込んでいるという意味だ。撤収の夜のクリップボードにはいつも同じことが書いてある。自分の角張った字で、一行目、ネット。毎晩ネットが先だ。ほかのすべては、ネットが受け止める床を必要とするから。
なのに、ネットが下りていない。
階段が一段抜けているのに気づくときの感じで、それに気づく。安全ネットのリングはまだケーブルの高みに乗っている。この時間にあるはずのない、ロープと網の青白い月。誰かが下ろさなかった。
誰かが、支えている。
リング
彼女はその真下に立ち、両手を鋼に掛けている。ジアン。空中ブランコ。三つ編みは片方の肩に落ち、こめかみは汗で濃く、汗はまだ首筋からレオタードの襟へ流れ込んでいく——見てはいけない場所へ消えていく。
それでも見てしまう。それから代わりにリングを見る。そちらのほうが、なぜか始末が悪い。
チョークが内腿にうっすら残り、白い手形になっている。長く力を入れて立っていたせいで、レオタードの縁が脚に細い線を刻んでいる。二十七歳。これは最終公演の顔ではない。最終公演の顔は緩んで、感謝していて、もう心はどこか別の場所にある。彼女の顔は、こちらを建物に残った最後のリギングポイントのように見据えている。
まだ残ってたの、と彼女が言う。
撤収です、とこちらは言う。ネットは……まだで。
そう、と彼女が同意する。まだ。
リングに掛けた指は関節まで白い。グリップの上のチョーク。自分の体重を金具に預けて生きてきた女の手。薬指には日に焼けていない帯が一本、指輪のかたちに残っている。この業界の人間なら、その帯の意味を知っている。指輪そのものがどこにあるかも知っている。テントで灯りが残っている部屋は楽屋だけで、その引き出しに鍵はかからない。
ネットを下ろさないで、と彼女が言う。
リストなら暗唱できる。一行目、ネット。動物用トラックはもう夜へ口を開けていて、その向こうでは撤収が始まっている——ポールが倒れ、控え綱が音を立て、この仮設の世界全部が「無に戻れ」と言い渡されている。彼女をその中を通って外へ送り出せば、今夜はトラックのランプと冷めたコーヒーと、薄いホテルのカーテンの下で再開される結婚になる。
リストの一行目なんです、とこちらは言う。声は、その文が値する以上にざらついて出た。
なら、ゆっくりやって、と彼女が言う。
ネットは二人のあいだに垂れている。そして飛ぶ人間にとって、それが壁だったことは一度もない。彼女はいつもどおりに潜る——手から先に、腰でひねって——そして演目が要求するより近くに着地する。彼女の掌が触れた作業着の袖にチョークが白く散る。掌がいつ来たのかは言えない。前腕に残った白い跡は小さく、意図的だ。自分の体重をどこに置くか決めた女のグリップ。
演目のときはいつも外すの、と彼女は、こちらの袖を見ないまま言う。戻し忘れたことは、一度もない。
今夜は忘れた。あるいは今夜は忘れていない。どちらなのか二人とも口にせず、沈黙が代わりに言う。
客席の照明はすべて死んだ。ワークランプだけがリング中央でひとつ唸っている。金色の水たまりがひとつ。彼女は後ろ向きにそこへ入っていく。ずっとこちらを見たまま。やがて頭上でブランコのロープが揺れる。
ネット、と彼女が言う。ここ。今夜だけ——
ホールド
彼女の手はもう襟にある——チョークとタコと、空中ブランコ乗りのあり得ないほどの優しさ。額が額に下りてくる。呼吸は速い。リリースの直前、すでに手を離して、まだキャッチが来ていないときの速さで。
外でポールが一本倒れる。テント全体が周りで息をつく。布の向こうで男が数字を叫び、誰かが返事をする。そのどれも、この二人とは何の関係もない。ネットは格子の影をワークランプの上に、おがくずの中の彼女の素足の上に、こちらの口と彼女の口のあいだで縮んでいく距離の上に投げている。
彼女は松脂と雨と、シーズンの終わりの匂いがする。指の青白い帯がランプの光を捉える。こちらがそれを見ているのを彼女は見ていて、隠しもせず、説明もしない。それが——襟に掛かった手より、まだという言葉より——この一年で誰かがこちらにした最も意図的なことだった。演技ではない。振り付けでもない。目の前で、声に出して、チョークで示された選択だ。
クリップボードはまだ手の中にある。一行目、ネット。ペンをノックして、その下に、撤収指示ではない唯一の言葉を書く。
ホールド。
それからクリップボードをおがくずに落とす。朝まで待てるリストもあるし、まだ朝ではないからだ。
ジアンが笑う——低く、一音だけ。スイングの頂点で彼女が出す音。そしてまたリングに手を掛ける。まるでこの夜を宙に保つ権利が自分にあるかのように。
それで、と彼女が言う。下ろすの、下ろさないの?
ロープが揺れる。遠くで動物用トラックがギアを入れ、こちらを置いて道へ出ていく。ヘッドライトがテントの壁を探照灯のように撫で、何も見つけない。まだ何も起きていない。そしてすべてが起きようとしている。ネットはまだ張ったままだ。
問いも、まだ宙にある。こちらはネットが守っていた空間を越える。

Leave the Net
After the last show, circus tent backstage. Jian will not let go of the safety-net ring. “Don't take the net down.” Walk out through the animal truck here and it's just teardown.
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